シャム双生児
僕達は二人。
僕達は一つ。
頭が二つで身体は一つ。
それが僕達なんだ。
片方が眠っている時、もう片方は起きているんだ。
片方が起きている時、もう片方は眠っているんだ。
でないと身体はどちらの言う事を聞けばいいのか分からなくなるから。
ある日お医者さんがやって来て、僕達を一人にする事を勧めたんだ。
うまくやってるつもりだったけれど、やっぱり無理があったみたい。
そうしないとそう遠くない日に二人とも死んでしまうんだって。
詳しい話は難しくてよく分からなかったんだ。
けれど片方を殺して片方を生かすという事だけはよく分かった。
僕達のママはそれを受け入れたんだ。
あんまり悩まなかったみたい。
それで僕達を比べて発育の良くない方を殺す事が決まったんだ。
僕達はね、起きている時は話せないけど寝てる時は話せるんだ。
夢の中なのかな。
その時だけ、僕達はそれぞれ自分の身体を持っているんだ。
手術の決まった日から、僕達の話題は一つになった。
どっちが殺されるのか。
どっちが生かされるのか。
君じゃない、僕だよ。僕のほうが勉強が出来ない。
でも君は絵が上手いじゃないか。殺されるのは僕の方さ。
会話の終わりは一つの疑問。
二人とも生きる方法はないのかなぁ。
ママは僕達を一人として見ています。
でも僕達は二人なんです。
どうか片方だけ殺すなんて止めて下さい。
どうか片方だけ生かすなんて止めて下さい。
二人で生きたいです。
一緒に生きたいです。
二人一緒なら長生きできなくてもいいです。
できるならば二人一緒に長生きしたいです。
もう何が欲しいなんていわないから。
もう何がイヤだなんていわないから。
もうママを困らせる事はしないから。
お願いです、僕達を一人にしないで下さい。
あとがき
この詩も『髪結いの亭主』と同じく櫻田さんのところにある100のお題の1つです。櫻田さんから持ちかけられて書きました。イメージは『ブラックジャック』に出て来る首から上だけ二つに分かれているシャム双生児です。 |
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